建築技術研究所 です。
ブログやTwitterから建築士試験についてお伝えしています。
特に、製図試験のポイントや考え方について自身の受験経験を基に記事を作成しています。
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建築の世界で誰もが目標とする”一級建築士”
その第一歩が、学科試験の合格です。
しかしながら、例年、学科試験の合格率は2割を切り、難しい試験のひとつと言えます。
今回は、その「学科試験合格」に向けての勉強方法についてお伝えしていきます。
- 過去問への対応が合格の鍵
- 新傾向(新出)の問題は、諦める勇気も必要
- 各科目のポイントを押さえて効率化
参考とするものを決める
一級建築士学科試験の勉強の第一歩は、参考とするテキスト・問題集をひとつ決めることです。
そして、選んだものは最後まで使い続けます。
他のものに目移りしそうになるかもしれませんが、ひとつのテキスト・問題集を使い倒す方が、いい結果が出ます。
また、テキスト・問題集は、可能な限り資格学校のテキスト・問題集の方が効率がよいです。
市販されているものは、資格学校のものに比べると情報量が少なく、試験範囲をカバーしきれない可能性があるからです。
副教材が必要なことも
これらのテキスト・問題集の解説では理解できないという人には、計算問題の解き方の解説書等、副教材が有効な場合もあります。
例えば、構造の計算問題が苦手な人には、「解き方を覚えて弱点克服! 一級建築士合格 構造力学」という本がおすすめです。
この本は、構造計算の入門書ではなく、試験問題に正解することに特化して解説しています。
問題の正解に特化しているため、計算方法以外の詳しい解説は省かれており、メインで使用するテキストとの併用が必要な部分があります。
合格へのカギは「習慣化」
学習効率を最大限に上げ、それを維持するには、「習慣化」して、毎日継続することが重要です。
そのためには、勉強するタイミングを決めましょう。
よくあるのが、〔仕事が終わってできる時間でやろう〕→〔結局、何もしない〕というパターンで、これでは「習慣化」できず、合格に少しも近づけません。
そうならないために、勉強するタイミングを決めるのです。
出社前や就業前、昼休み、通勤電車の中等、まずは、1日10~15分でよいので確実に勉強する時間を決めましょう。
第一歩としては、勉強しない日をつくらないことが必要です。
仕事から帰宅後の勉強は、予定を立てて計画的に行いましょう。
最初は、あまり長い時間できないかもしれませんが、少しずつ内容が理解できてくると、長時間勉強できるようになってきます。とにかく、同じように毎日繰り返し勉強しましょう。
学習の基本は【過去問】
資格試験の勉強において、王道ともいえる【過去問】への対応が、建築士試験でも例外なく合格への近道です。
資格試験には、「受からせる試験」と「落とす試験」の2種類があり、建築士試験は後者です。
過去問の出題は、「受からせる試験」の場合、過去に出題したまま出題されることも多く、問題を数多くこなしていれば正しく答えることができます。
しかし、建築士試験のように「落とす試験」の場合、過去問の正解肢のみを暗記するだけでは、正答できないため、問題の本質から理解している必要があります。
そのためには、択一問題としての正誤に一喜一憂することなく、各選択肢の正誤を見極める練習が必要になります。
その中で、多く勉強する方ほど、過去問の正解肢を覚えてしまい、実際は身になることなく勉強した気になりやすいため、注意が必要です。
このような場合、スマホアプリを併用するのも、とても有効です。
スマホアプリの場合、自分が間違えた記録が残るため自分の得意不得意が分かることと、スキマ時間を活用できるため、忙しい業界で生きる皆様にはうってつけだと思います。
また、過去問の中でも、本試験でいつ出題されたかも出やすさに関係します。
経験上、直近の2,3年で出題された問題は、出にくい傾向にあります。
狙い目は、それ以前に出題された問題です。
ただし、直近の試験で出題された問題が出た時は、確実に得点しないと合格が遠のいてしまうため、過去問の内容を押さえておく必要はあります。
諦める勇気
試験の合格を目標とするのであれば、新傾向の問題に使う時間は、極力短い方がいいです。
新傾向の出題を予想することは、とても難しく、かなり効率が悪いです。
受験テクニックとして、他の受験者の正答率が低い問題は、落としても合否に影響しにくいため、出題傾向を見極めて、諦める(=確実に正答できる問題に時間を使う)ことも必要になります。
近年は、新傾向の出題が多くなってきていますが、過去問をほぼ完璧に正答できれば、4肢すべてが新出でない限りは、正誤の判断がしやすくなります。
各科目のポイント
学習を進めていく上では、各科目のポイントを押さえることが効率化につながります。
ここでは、私が思う各科目のポイントについてお伝えします。
学科Ⅰ(計画)
学科Ⅰ(計画)は、他の科目と比べても暗記的な要素が強いのが特徴です。
また、学科Ⅰ(計画)と学科Ⅱ(環境・設備)は、問題数が他と比べて少なく20問のため、足切りになりやすい科目です。
学科Ⅰで出題される寸法等の数値に関する問題は、得点源です。
また、建築積算について、毎年1問出題されていますが、この問題は、他に比べると出題範囲が狭いため、確実に得点したい問題になります。
建築実例(建築史を含む)については、(過去の実績より)最大で7問程度出題される可能性があります。
仮に、7問出題されて、分かる問題がなく、すべてを落としてしまうと他の内容から3問落とした時点で足切りになってしまうため、すべてを勘に頼るのは、合格に向けて現実的ではありません。
前述の通り、新出の内容を予想するのは難しいですが、10年分程度の過去問の内容を覚えることができれば、4肢のうち、いくつかの選択肢を除外することができるため、正答率はすべてを勘に頼るよりもたかくなります。
学科Ⅱ(環境・設備)
学科Ⅱ(環境・設備)は、学科Ⅰ(計画)と同様、暗記的な要素が強い科目です。
とりわけ、学科Ⅱでは、温熱環境や音、光の伝わり方などの「現象」を理解することが必要となります。
この「現象」には、法則性があることが多く、その法則を覚えることが攻略の鍵になります
また、計算問題は、過去問や類似問題が出やすいため、過去問を使って計算過程を覚えて確実に正答できるように準備しましょう。
学科Ⅲ(法規)
学科Ⅲ(法規)の攻略の第一歩は、アンダーライン引きです。
各資格学校で出版されている法令集には、アンダーライン引きの引き方見本があるので、その通りに線を引いてみましょう。
次に、過去問を数多く解きながら、その度に、再度、法令集に線を引きます。そうすることにより、出題が多い部分がより強調されて、試験で該当部分を見つけやすい法令集をつくることができます。
また、先にも少し触れましたが、試験では、法改正がされて変更された部分が出題されやすい傾向にあります。
他の科目と異なり、変更された部分が分かるため、法令集にその旨のマークをするだけでも、新しい問題に対応しやすくなります。
ここまで、法令集のライン引きについてお伝えしましたが、頻出の問題は、ある程度、暗記しておくことをおすすめします。
ある程度、暗記しておけば、法令集は確認程度に使用だけで済み、回答のスピードを上げることができます。
学科Ⅳ(構造)
学科Ⅳ(構造)のポイントは、計算問題です。
計算問題はとっつきにくく苦手という方も多いですが、試験的には、そのほとんどが1問3分程度で答えられる問題ですし、範囲が限られているため、その範囲の中で計算方法さえ覚えれば見たことがない問題でも応用が可能です。
また、計算問題の中には、部材の変形をイメージできれば計算がしなくても正答できる問題が一定数あります。
これも繰り返しの練習が必要ですので、過去問を中心にたくさんの問題を解き、計算方法を理解しましょう。
学科Ⅴ(施工)
学科Ⅴ(施工)のポイントは、現場のイメージをつかむことにあります。
この科目も比較的暗記的な要素が強いですが、学科Ⅰ(計画)とは異なり、現場のイメージが湧かないとなかなか覚えられません。
イメージが湧かないものはスマホで検索すれば、写真や映像が出てくるので、有効に使いましょう。
まとめ
- 過去問への対応が合格の鍵
- 新傾向(新出)の問題は、諦める勇気も必要
- 各科目のポイントを押さえて効率化