一級建築士の製図試験では、平成26年の試験を最後に梁伏図の出題がなくなっています。
それにより、架構(構造)計画がきちんと理解できていなくても、図面に表れにくくなっています。
しかしながら、架構(構造)計画は、平面図や断面図でも知識を測ることができます。
そして、計画が構造的に成立していないものは、基本的に詳細な採点をされることなく不合格が決定してしまいます。
一級建築士の製図試験での構造的な失敗の代表例は、「岡建ち柱」と「片持ち梁の長さNG」です。
この記事では、このうち、片持ち梁の計画についてを吹抜けを例に挙げてお伝えします。
- 柱スパンに合った吹抜けの計画が基本
- 片持ち梁の長さは、2.5mが限界
- 柱スパンを跨いで計画しないと決めてから、計画を始める
吹抜けの架構計画の基本
周囲を大梁に囲まれた吹抜けは、構造的に安定しています。
これは、製図試験での吹抜けの架構計画で基本になります。
次に、四辺を大梁に囲まれていない吹抜けを2つ見ていきます。
小梁と片持ち梁の違い
下図の吹抜けの架構計画について考えていきます。
左の図はスパンを跨いでいないのに対して、右の図はスパンを跨いでいます。
この場合、構造的にはどのように違うのかを考えるために、部分的な梁伏図を描いてみます。
ちなみに、2つは同じ面積の吹抜けです。
梁伏図を描くと下図のようになります。
左の図のパターンの場合、小梁を設けることで構造的に安定させることができているのに対して、右の図のパターンでは、小梁の考え方は同様ですが、中央スパンの大梁が片持ち梁になります。
その場合、片持ち梁の長さは、試験のローカルルールで2.5mが限界とされています。
実務でも、2m以上の片持ち梁は構造的に非効率なため、あまり採用されていないのではないでしょうか。
おそらく学科試験に合格された方であれば、ここまでは理解できているのではないかと思いますが、冒頭の話の通り、梁伏図を描かなくなったため、架構計画のチェックを忘れ、平面計画ばかりに気を取られると、いつの間にか2.5mを超えてしまっている場合があるため注意が必要です。
失敗しないために
試験でこのような失敗をしないために、まず、考えることは、柱スパンを跨いで計画しないと決めておくことだと思います。
スパンを跨ぎさえしなければ、片持ち梁を計画せずに済むため、この方法が試験的な対応としては一番効率的です。
しかしながら、課題要求によっては、そうせざるを得ない場合もあるかもしれません。
そして、うっかり2.5mを超える片持ち梁を計画してしまい、時間的にも後戻りできない場合の解決策は、意匠を無視して大梁表しの吹抜けとしてしまうことです。
実務的には、このようなことをしないと思うため、褒められた方法ではありませんが、「試験に合格する」という目的を達成するためには、いかに減点を少なくするかを考える必要があり、このようにすれば、構造的な部分はクリアできます。
これは、吹抜けに限らず、大空間も同様で、柱スパンをはずして計画すると、構造NGになりやすいため、柱スパンに合わせて大空間を計画します。
(実際のエスキスの過程では、大空間の面積を考慮してスパン割りを決めることが、一般的ではないかと思います。)
まとめ
- 柱スパンに合った吹抜けの計画が基本
- 片持ち梁の長さは、2.5mが限界
- 柱スパンを跨いで計画しないと決めてから、計画を始める