建築技術研究所 です。
ブログやTwitterから建築士試験についてお伝えしています。
特に、製図試験のポイントや考え方について自身の受験経験を基に記事を作成しています。
試験に向けての学習の補助として活用していただけると嬉しいです。
今回の記事では、製図試験受験者が躓くポイントのひとつである空調設備についてお伝えします。
中央熱源方式と個別分散熱源
空調方式には、熱源の違いとして中央熱源方式と個別分散方式があります。
中央熱源方式は、熱源機を1箇所にまとめて配置する方式です。熱源機の能力が大きいため、大容量の空調を行うことに優れています。しかし、部分的な空調に対してもひとつの熱源を稼働させることになるため、余計なエネルギーを消費することになります。
個別分散方式は、熱源機を分散して配置する方式です。設計時に設定した室やゾーン毎に熱源機を稼働させることができるため、個別制御によるエネルギー消費を削減させることができます。しかし、中央熱源方式の空調に比べて、1台の熱源機が対応できる容量は少なくなります。
中央熱源方式
中央熱源方式による空調では、「単一ダクト方式」「ファンコイルユニット方式」などがありますが、ここでは、特に採用頻度が高い、単一ダクト方式について説明します。
熱源機は、空冷ヒートポンプチラー方式を採用することが多いです。
空冷式という選択もありますが、空冷式に比べて設備が複雑になるため、試験では使用しない方が無難です。
単一ダクト方式
単一ダクト方式は、機械室に設置した空気調和機(以下、空調機)から空気をダクトによって運ぶことで空調します。
吹出能力が高いため、大空間の空調にも適しています。
また、外気を取り入れながら空調をするため、別途に換気設備を設けなくても換気をする事ができます。
個別分散方式
個別分散方式とする場合、試験では、以下の3つを使い分けます。
- 天井カセット型
- ダクト接続(床置き型)
- ダクト接続(天井隠蔽型)
熱源は、中央熱源方式の時と同様に空冷式とすることが多いです。(空冷ヒートポンプパッケージ方式)
天井カセット型
実務でも事務室などでよく使用される天井カセット型ですが、室内機から直接、風を吹出して空調します。また、室外機と室内機は、冷媒管によって接続されます。
吹出能力は高くないため、大空間の空調には使用できず、この方式の空調を採用する室の天井高は、4m程度が目安になります。
また、天井カセットは水平でなくてはならないため、勾配天井では使用できません。
天井カセット型は、室内の空気を循環させることにより空調させるため、別途に換気設備が必要になり、試験では、省エネルギー性を考慮して全熱交換が行える機器を計画します。
ダクト接続(床置き型)
ダクト接続(床置き型)は、機械室に設置した空調機から空気をダクトによって運ぶことで対象室を空調します。
吹出能力が高いため、大空間の空調にも適しています。
また、単一ダクト方式と同様に外気を取り入れながら空調をするため、別途に換気設備を設けなくても換気をする事ができます。
一般的には、大空間をダクト接続(床置き型)、その他の室を天井カセット型として、併用することが多いです。
ダクト接続(天井隠蔽型)
ダクト接続(天井隠蔽型)は、天井内に設置した空調機から空気をダクトによって運ぶことで対象ゾーンを空調し、吹抜け部分の空調に適しています。
吹出能力は、床置き型よりは低く、水平方向1スパンを目安にします。
また、天井カセット型と同様に室内の空気を循環させて空調するため、別途に換気設備を計画します。
ダクト接続(床置き型)と同様に、天井カセット型と併用されます。
まとめ
製図試験における空調設備は、【どこに空調機・熱源機があるのか】【どのように熱を運ぶか(冷媒は何か)】を理解すると、《機械室の有無、設置位置》《DS・PSの有無、設置位置》が分かるようになります。
給水用PSを必ず各階に1箇所以上計画するため、空調用のPSは、あまり気にしなくても減点されることは少ないですが、特定の室に対しての空調のPSは、給水用PSが近くにあるとは限らないため、理解していることをアピールする意味では、その室の近くに計画しておくと無難です。
DSは、どこに空調機があるのかと何のためのDSなのかによって計画に反映させます。
単一ダクト方式で大空間の空調を行う場合、RA用のDSが必要になります。ダクト接続(床置き型)の場合に比べて全館空調となる単一ダクト方式の場合は、このRA用DSを忘れやすいため、注意しましょう。