一級建築士製図試験に向けて学習を進めるうえで、自分のエスキスの過程が不適切だということに気づくためには、客観的な視点が欠かせません。
そこで、今回は、エスキスの具体的な失敗例を示して、その問題点と原因をお伝えしていきます。
建築物全体のボリュームの検討が不適切であることが、計画の問題点である
エスキス前半ができていなかったり、途中で適切な検討結果を崩したりしていることが原因
計画の問題点
一級建築士製図試験では、別記事でもお伝えしている通り、各階ホールは、利用者動線の基点とすることが基本になります。
しかしながら、下図のように、ホールが存在しない計画では、廊下によって各要求室間の動線だけを意識できていたとしても、動線の基点がないため、建築物全体での動線をイメージできているとは言えません。
計画の原因
このような計画になってしまうおおきな原因は、空間構成で重要となる面積の振分けができていないことにあります。
それには、「断面ボリュームの検討が不完全」、「スパン割りが不適切」等の原因があります。
「断面ボリュームの検討が不完全」
「断面ボリュームの検討が不完全」な場合は、エスキスの基礎となる前半が出来ていないため、詳細な計画に入る前の時点で計画が破綻しています。
断面ボリュームが不適切となる原因は、要求面積「適宜」の室の設定が不適切、要求室の階振分けが不適切、吹抜け(大空間上部を含む)部分の検討不足などが原因として挙げられます。
「スパン割りが不適切」
「スパン割りが不適切」な場合、室の面積がスパン割りに依存しているため、要求に比べて、過大(もしくは過少)になりやすい傾向にあります。
それにより、当初の断面ボリュームの検討が適切だったとしても、検討結果と実際の面積が異なるため、室の面積を確保しようとすると共用部の面積が圧迫されて、結果として、ホールがなくなってしまうことがあります。
平面プラン
そして、先述のような不適切な検討の結果が、平面計画で顕在化するため、受験者は詳細の計画検討がうまくいっていないと勘違いしてしまいがちです。
しかしながら、実際には、それ以前のエスキス前半で問題を解決しなければ、合格レベルの計画になりません。
前向きな見方をすれば、動線だけはできている状態で、ホールが適切に計画できれば、合格に近い計画に変えることができます。
ホールの適切な大きさは、エントランスホール(以下、EH)では、EHの特記事項やサブエントランスの位置(敷地周辺状況)にも影響されるため一概には決められませんが、2階以上のホールは、柱スパンで囲まれた1コマ(40~50㎡)が目安となり、それらは、EHよりも大きくなることはありません。(=EHも1コマ以上になります。)
この記事のテーマであるホールがない計画だけでなく、2階以上のホール>EHになってしまう計画も、ボリューム(面積)の振分けに問題がある状態のため、エスキスができていない部分に戻ってやり直す必要があります。
まとめ
建築物全体のボリュームの検討が不適切であることが、計画の問題点である
エスキス前半ができていなかったり、途中で適切な検討結果を崩したりしていることが原因