《一級建築士製図試験》地道な努力が実を結ぶ!【試験対策における”積上げ”とは】

一級建築士 製図試験

Ohashi / 建築技術研究所 です。

一級建築士試験に合格するためには、多くの勉強時間を必要とします。

試験対策として一番大切なのは、6時間30分の試験時間をどのように使うかというところです。

しかし、そこまでたどり着くには、それ以前の基本練習も欠かすことができません。

今回は、試験対策における基本練習=”積上げ”について、押さえたいポイントをお伝えします。

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”積上げ”の種類

私の考えの中では、”積上げ”の種類は、大きく分けて2種類あります。

  1. 共通する”積上げ”
  2. 課題の特性に合わせた”積上げ”

これらは、取り組むタイミングによる違いです。〔1.〕は通年ですが、〔2.〕は、7月の課題発表後に取り組むことになります。

それぞれについて、具体的な例を挙げていきます。

共通する積上げ

ここでは、どんな課題でも必ず押さえたい【3つ】をお伝えします。

トイレ

トイレは、どんな課題でも、各階に1つは必要になります。
(部門によって利用者が区切られる時は、部門毎に必要になることもあります。)

平面計画としては、絶対に計画するものの中でも優先度が低く、余ったところに押し込むように計画することもあります。

そんな時にエスキスや作図を遅くする原因となるのが、《トイレ内のブースや手洗い器の配置》です。

そのため、《トイレ内のブースや手洗い器の配置》は、原則としてエスキス中に計画せず、想定される面積(1コマ以内)に対して、予め決めた形を作っておくのがベストです。

下図は、配置の例です。

配置例

トイレ内の計画ができていなくて不合格になることは、基本的にありませんが、トイレ内も動線を意識した計画とすると図面の完成度を高くすることができます。(図中 緑部分参照)

階段

一級建築士試験で必要になるのは、利用者用管理用の違いを理解することと、階高に合わせた段数設定ができるようになることです。

エスキスしながら階段の寸法を検討していては、時間が足りないので、試験で使う階段のパターンもおる程度覚えておく必要があります。

利用者用と管理用の違いを以下に上げます。
(可能性としては、屋外階段もありますが、基本的に基準階型の課題以外は使わないため、今回は割愛します。)

利用者用階段

利用者用は、バリアフリー法に適合する階段とします。

「建築物移動等円滑化誘導基準」では、階段の幅を140cm以上、蹴上げは16cm以下、踏面30cm以上という寸法の規定があります。

管理用階段

管理用階段は、建築基準法に適合する階段になります。

建築基準法で必要になる寸法は、階段の幅を120cm以上、蹴上げは20cm以下、踏面24cm以上です。

植栽

植栽は、手が勝手に動くくらい練習することで、図面の印象がよくなります。

植栽については、別記事でご紹介しているので、そちらをご覧ください。

課題の特性に合わせた”積上げ”

7月の課題発表後は、前項の共通する”積上げ”に加えて、課題の特性に合わせた”積上げ”をいていかなくてはいけません。

ここでは、【4つ】ご紹介します。

室(空間)の面積算定

どんな課題でも、所要室の面積が「適宜」の場合、自分で適切な面積を設定する必要があります。

会議室や事務室といったどんな用途の建物でも存在する室は、机の配置等を考慮して面積を決めていきます。最悪、分からなければ、使用人数×2㎡でも面積を決められます。

課題の特性による室も基本的な考え方は変わりませんが、「使用人数×2㎡」の考え方は使えなかったり、面積が過剰、過少になったりするため使えないことがほとんどです。

そのため、課題の特性による室の検討では、その室が持つ要素を理解しておかなければなりません。

例)H30 プール

  • プールに必要な面積(寸法)
  • プールサイドの幅
  • 監視室・採暖室・器具庫の配置、面積  等

特有の納まり

一般的なコミュニティセンターの課題でも、要求室の条件次第では、階高が変わることがあります。

その延長で、構造的な納まりを覚えなければいけないものがあります。特に、防水処理が必要になるものがいい例です。

資格学校では、必ず押さえるポイントになるので、試験本番も理解している前提で進んでいきます。

例)R1 屋上庭園 - 屋内と屋外の段差

  H30 プール  - 二重スラブ

  H29 浴室   - 小梁を利用した段差

特有の設備

用途によって必要な設備がある場合は、その設備についても理解しておく必要があります。

設備については、予備知識がないとちゃんとした解答ができません。先述の構造と同様に資格学校の講座でも扱われるかと思いますので、確実に覚えましょう。

例)R1 美術館 収蔵庫 - 壁内空調(出題なし)

  H30 プール  - 排風機

空間的性質の理解

空間的性質をもう少し具体的にすれば、その用途特有の動線をいい、基本的な考え方を理解することで、本試験での空間構成の破綻(逆動線)を防ぎます。

H30のプールを例にすれば、共用部からプールへの動線は、以下のようになります。

①【共用部】②【更衣室】③【プール】

この時の,設置階は、同一階となるのが一般的で、可能性として、がa階、が(a+1)階という場合(②,③は専用の廊下が介在する)もあるかもしれません。
しかし、が(a+1)階、がa階となることはありません。

その理由は、エントランスから入ってきた利用者が一度、プールがある階よりも上階へ行き、また下りてくることになるからです。これが《逆動線》です。

この場合、逆動線にならないためには、空間としてという動線が必要ということを理解している必要があります。

このように空間的性質を理解することで、”常識的な”判断ができ、空間構成での減点をしなくて済みます。

試験は『知らなかった』は通用しません。用途それぞれの性質は、課題発表直後からしっかりと学習しましょう。

まとめ

製図試験は、その場で考えることが多いと考える人もいるかもしれません。
しかし、実際は、今回ご紹介した内容は、事前に自分の〈手札〉として持っておくことで、時間短縮や精度向上を図る必要があります。

製図試験の練習で最も大切なのは、冒頭で挙げた通り、6時間30分の試験時間をどう使うかを練習することだと思いますが、それは、このような地道な努力のうえに成立します。

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