一級建築士製図試験において、吹抜けの計画は、空間構成を構築するための重要な要素になっており、その出来栄え次第で計画の印象が変わります。
今回は、面積は条件を満たしていても、空間構成としては有効でない吹抜けパターンを具体的に示しながら、その対応の一例をお伝えします。
有効でない吹抜けパターン
- (面積指定がなくとも)過少な吹抜け
- 利用者の空間に面する部分が少ない吹抜け
過少な吹抜け
吹抜けの出題には、面積(※1)が指定される場合とそうでない場合があります。
※1吹抜けの面積とは?
面積の指定がある場合には、どんな受験者もその指定された面積に近づけようと計画しますが、面積の指定がない場合には、できる限り小さくして計画する方が、エスキスは簡単になります。
しかしながら、過少な吹抜けは、空間への影響が有効なものとは言えません。
例えば、1コマの半分(20~25㎡程度)の吹抜けを風除室上部に設けたとします。
この場合、その建物に入ってきた人が、吹抜けの存在に気づくことは無く、上階のホールにいる利用者も下階の空間を感じることができません。
そのため、この吹抜けは、単に面積調整のための「床がない部分」に過ぎず、適切な空間構成ではありません。
吹抜けに面積の指定が無い場合でも、目安として、1コマ(40~50㎡※2)程度を確保したいところです。
※2風除室上部の場合は、風除室面積も含む
利用者の空間に面する部分が少ない
エントランスホール(以下、EH)上部の吹抜けは、風除室上部・コアの横がひとつのポイントになりますが、その場合、吹抜けの面積の目安は、大きくても70㎡程度までです。
2コマ(約80~100㎡)以上の吹抜けが求められた時、同様の配置で計画すると下図のような配置になります。
この場合、図中のグレー部分が必然的に所要室になるため、吹抜けが利用者の空間に面するのは、6スパンに対してホールとEV前の1.5スパンしかなく、面積が確保されていたとしても、有効な空間とは言えない状態です。
計画のヒント
上述のように2コマ以上の吹抜けが要求された時は、風除室上部・コア横のパターンは無いと考える方が無難です。
EHの特記として要求された場合、そのEHは、一般的な場合よりも大きいことが多く、特記によって、EH内にスペースが要求されたり、敷地周辺状況からサブエントランスを設けたりすることがあります。
そのような場合には、吹抜けをそのスペース上部に設けたり、メインエントランスからサブエントランスまでの動線上に設けたりすると、きれいに納まることもあります。
まとめ
有効でない吹抜けパターン
- (面積指定がなくとも)過少な吹抜け
- 利用者の空間に面する部分が少ない吹抜け