以前の記事で試験の出題傾向の変化について書いているのですが、その中でも、近年は敷地外からのアプローチの自由度が増している傾向にあります。
そこで今回は、私なりに敷地外からのアプローチの考え方についてまとめました。
- 敷地外からのアプローチは、多くの選択肢を与える問題に変わりつつある
- 【建物の「オモテ」】=【人の流れ】を考慮する
- 特性に応じた位置からの動線を屋外で確保したうえで、道路側に出入口を設ける
傾向の変化
これまで試験では、道路に面して建物中央部に主出入口を設けることがセオリーでした。
しかし、近年の試験では、敷地外からのアプローチについて、道路以外からのアプローチも含め、多くの選択肢を与える問題が増えました。
その傾向は、平成30年の試験から顕著になっています。
平成30年は、旧正門がある桜並木側がメインアプローチの本命でした。
令和元年は、道隣接する本館側のみに主出入口を設け、道路に面して主出入口を計画していない標準解答例も公表されています。
また、これまでは、建物中央部に設けるのが一般的であった主出入口も敷地条件や内部計画から建物角に設けている解答例も出ています。
出題者の意図
傾向の変化に共通しているのは、【建物の「オモテ」】を受験者自身が決めるということにあります。
逆の見方をすれば、これまでの「道路に面して」というのは、受験者(設計者)の能力とは関係なく「機械的な作業」に過ぎませんでした。
これは、旧試験のパズル的な試験の名残でもあります。
試験で重要な考え方
【建物の「オモテ」】=【人の流れ】を考慮することは、この試験で最も重要です。
一方で、採点結果は、常に〈後出し〉であり、自分が出した答えが、間違いでないかは、あくまで結果論になってしまいます。
それらを勘案すると、
課題(敷地)の特性に応じた位置からの動線を屋外で確保したうえで、道路側に出入口を設ける
という対応が【合格するために最良の選択】であると考えます。
理由は、道路側に向けて設けておけば減点されないこと、また、屋外で確保しておけば、〔敷地の特性に応じた計画〕の観点からも減点されないことにあります。
また、道路以外に向けられた出入口の妥当性の判断は〈後出し〉であるため、出入口が1箇所の場合、不適当と判断されると大きな減点のリスクがあることも理由のひとつです。
プランするなかで余裕があれば、課題(敷地)の特性に応じてサブエントランスを設けることができれば、なお良いでしょう。
しかし、課題で要求されない場合は、『プランがまとまらなければ潔く諦める』ということも試験テクニックのひとつだと思います。
まとめ
- 敷地外からのアプローチは、多くの選択肢を与える問題に変わりつつある
- 【建物の「オモテ」】=【人の流れ】を考慮する
- 特性に応じた位置からの動線を屋外で確保したうえで、道路側に出入口を設ける