《一級建築士製図試験》『70㎡の吹抜け』で空間構成への意識が分かる!

一級建築士 製図試験

Ohashi / 建築技術研究所 です。

製図試験では、大空間や吹抜け等で絶妙に空間構成を崩す要因を盛り込み出題されます。

具体的に例を挙げれば『70㎡の吹抜け』があります。
そして私は、その『70㎡の吹抜け』の計画で受験者の空間構成への意識が分かると考えています。

そこで今回は、『70㎡の吹抜け』を通じて、空間構成についてお伝えします。

風除室上部の吹抜けの面積に算定方法がありません。その解釈は多岐にわたるのが実情です。詳しくは、こちらをご確認ください。

  1. ホールの面積が確保する
  2. 管理の動線を最短で共用部(ホール)とつなげる
  3. 「階段とEVはセット」という思い込みをやめる
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『70㎡の吹抜け』とは

製図試験受験者が「70㎡」という数字を見て、「嫌な大きさだな」と思えば、その方は、それなりに空間構成ができるのではないでしょうか。

製図試験では、縦横のスパンで作られる四角形を「コマ」という単位で呼んだりしますが、「70㎡」は、その「1コマ」には入らず、「2コマ」では少し大きい絶妙な面積です。

そのため、「1コマ」からはみ出る部分をどのように計画するかが重要になります。

『70㎡の吹抜け』が起こす問題点

学習初期の受験者は、『70㎡の吹抜け』を下図のように考える方がとても多いです。

このように計画した時、私は以下の3つの問題があると考えます。

  1. ホールの面積が小さくなる
  2. 管理ゾーンからホールまでの動線が長くなる
  3. 「階段とEVはセット」という思い込みをしている

ホールの面積が小さくなる

一般的な計画では、ホールは2コマの面積を確保します。

しかし、『70㎡の吹抜け』を上図のように配置することで、ホールは「1コマ+廊下」という構成に変わり、面積が小さくなってしまいます。

その階における利用者動線の基点となるホールが、小さくなってしまうことで人の流れを意識して空間を構成していないように見える原因となります。

管理ゾーンからホールまでの動線が長くなる

吹抜けが縦に伸びることで、管理コアから各階ホールへの動線がまっすぐに通らなくなり、余計な廊下ができて動線が長くなります。

下図を比べた時、あなたが採点者ならどちらが管理ゾーンからホールへの動線ができていると思いますか。

採点する側になると、余計な廊下をつくらない方が動線がきれいに見えます。
また、余計な廊下をつくらないことで面積を浪費しなくて済むため、エスキスが簡単になります。

私が管理階段を上図の位置とした理由は、別記事を参照

「階段とEVはセット」という思い込み

製図試験ではよく、階段とエレベーターを1つのコマの中に納める計画をします。

しかし、これはあくまでも、設計者が勝手に決めたことであり、課題で要求された内容ではありません。

また、2方向避難のために分離しなくてはならないのは、階段だけであり、エレベーターは、計画上で自然な位置にあればどこにあってもいいのです。

先入観で「階段とEVはセット」だと思い込んで計画をすることによって計画の自由度を大きく下げてしまい、結果として、エスキスが難しくなります。

『70㎡の吹抜け』のベストな位置は

受験者
受験者

それでは、どこに計画すればいいのですか?

私は、下図の構成が良いのではないかと考えています。

もちろん、他の条件次第で構成は変わってきますが、特段の指示がない時には、エントランスホール上部に設けると他の構成を崩さなくて済むため、エスキスをまとめやすいです。

理由は、「階段とEVはセット」という思い込みをやめEVを階段から離すことでホールの面積が確保され、かつ、管理の動線が最短で共用部(ホール)とつながるからです。

また、吹抜けに限らず、大空間や屋上庭園などにも共通しますが、長辺入りの建物の計画で、直行する方向に長く室を計画すると、面積の残り方が中途半端になってしまうため、エスキスが難しくなることがます。

そのため、建物の長手方向に合わせて、同じ方向に長い空間をつくってあげることで、簡単にエスキスを進められます。
(面積の残り方次第では、例外があります。)

吹抜けの面積については、風除室上部は面積を控除すべきだと考えています。(詳しくは、こちらをご参照ください。)
そのため、ここで示したように計画する場合、風除室を吹抜けの位置から外すことやどこかのスパンを長くする等の対応が必要なことをご承知おきください。

まとめ

『70㎡の吹抜け』は、以下の考え方が重要!

  1. ホールの面積が確保する
  2. 管理の動線を最短で共用部(ホール)とつなげる
  3. 「階段とEVはセット」という思い込みをやめる

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