建築技術研究所 です。
ブログやTwitterから建築士試験についてお伝えしています。
特に、製図試験のポイントや考え方について自身の受験経験を基に記事を作成しています。
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今回は、別記事「大空間の設置階」の中から、1階に大空間を配置した場合の空間構成について少し詳しくお伝えしたいと思います。
- 管理部門や共用部も混在するため、1階が窮屈になりやすい
- ボリューム検討が不十分なのが原因
- ポリュームを1階に振分けられるように再検討する
問題点
別記事で挙げている通り、大空間の設置階は、人の流れだけを考慮すれば1階がよいです。
しかしながら、1階は、管理部門の機械室等のバックスペースや共用部門のスペースを計画するのにも適しているため、すべてを1階に配置すると窮屈になりやすくなってしまう一方で、2,3階は、比較的余裕ができやすいです。
そのような時、建築物全体の空間構成が崩れやすいため、注意が必要になります。
2,3階で余った面積は、共用ホールに振り分けられることが多いため、ホールが通常よりも大きくなってしまい、2,3階ホールがエントランスホール(以下、EH)よりも大きくなってしまうとことがあります。
別記事「ホールの大きさと空間構成」でもお伝えしているように、人の流れを考えれば、EHよりも2,3階ホールの方が小さくなければなりません。
受験者が任意で決めたスペースで余ったスペースを埋めることも可能ですが、その面積が所要室よりも大きくなったり、所要室と重複した用途のスペースになっている場合は、減点されることもあります。
原因
1階に余裕がなく、2,3階でスペースが余る構成になってしまう原因は、エスキス前半でボリュームの検討が不十分であることです。
所要室の面積、吹抜ける空間や屋上庭園の有無等から、階毎のバランスを調整しますが、その過程が適切にできていないと、このような構成になってしまいます。
解決方法
建物は必ず総3階にしなければいけないわけではなく、上階にフロアがない下屋を計画したり、屋上庭園がある場合には、その設置階を3階から2階に変えたりするだけでも建築物の面積は変わるため、自信がない時こそ時間をかけて複数の案を考えて、そこから選択するようにするとその後の手戻りが少なくなります。
※極端な例ですが、下階にたくさんの室を配置し、3階はコアと1室しかない等、建築物として常識から外れたものも、空間構成ができていないため、減点になります。)
また、1階への設置が指定されていない共用部門のスペースは、2,3階とすることはできないのかも検討すべきです。
受験者自身が決めた条件が、製図試験を難しくするため、課題の条件から外れないのであれば、ある程度、割切ってエスキスを進めるようにするとよいです。
ただし、課題で要求された延床面積も気にすべきポイントでもあり、上階の面積を少なくするだけでは、全体の面積が小さくなりすぎて所要室が配置できなくなるため、要求面積の最大値を狙ってうまく納められるように計画しましょう。
まとめ
- 管理部門や共用部も混在するため、1階が窮屈になりやすい
- ボリューム検討が不十分なのが原因
- ポリュームを1階に振分けられるように再検討する