近年の製図試験の問題は、外部からのアプローチ(出入口の位置)の自由度が高い傾向にあります。
出入口の位置は、内部計画、特にゾーニングに大きく影響を与えることから、それらを考慮したうえで決める必要があります。
また、ゾーニングが長辺 / 短辺のどちらに延びているかで内部の利用者動線の長さが変わり、出入口の位置とあわせて内部計画の骨格となります。
今回は、それらについて特徴と注意すべき点についてお伝えしていきます。
出入口の位置・ゾーニングの向き
外部から建物内へのアプローチは、大きく分けて【長辺入り】と【短辺入り】があります。
そして、ゾーニングは、利用者が優先され、好条件に向けて張り付くことになります。
建物の大まかな構成は、これらの組合せで決まります。
冒頭でも挙げた通り、近年の試験では、アプローチ方向は、長辺でも短辺でも可能で、自分で選択しなければならないものが増えてきています。
組合せの特徴
それぞれの特徴について比較します。
① 長辺入り+短辺好条件
このパターンでは、好条件の位置によって利用者ゾーンが決まり、事務室に受付機能が求められている場合には、エントランスホール(以下、EH)を挟んで反対側に管理ゾーンがEHに隣接して計画されるのが一般的です。
事務室に受付機能が求められていない場合には、エントランスホールの対面(図中の空白部分)に管理ゾーンを配置することができることによって、同一階で2つの管理(搬入)動線(管理ゾーンから利用者ゾーンへの動線)を設けることができます。
② 長辺入り+長辺好条件
このパターンは、製図試験での計画で最もオーソドックスな計画で、建物出入口に向かって左右にバランスよくコアを配置しやすく、ゾーン毎にまとまった面積を確保しやすい特徴があります。
実際の計画では、図中のかっこ書きとした利用者ゾーンのどちらかが管理ゾーンになるのが一般的です。この時の管理ゾーンの決め方は、サブエントランスの位置などから、利用者ゾーン決めた残りが管理ゾーンになります。
このパターンでは、①の計画のように複数の管理(搬入)動線を確保しにくく、階別ゾーニングとする方が有効です。
③ 短辺入り+短辺好条件
このパターンでは、主出入口の対面に利用者ゾーンを配置できる場合は、基本的な考え方は②と同じです。
しかし、好条件が主出入口側にある場合には、上階のホールやコアの位置に工夫が必要です。
まとまった利用者ゾーンの面積を好条件側に確保するためには、上階ホールやコアの位置は建物の中央付近に寄ることが多くなります。
そのため、動線計画が複雑になりやすく、この動線を処理するためには、ある程度練習を積み、自分が得意とする形を作っておく必要があります。
④ 短辺入り+長辺好条件
このパターンは、②のパターンと同様、まとまった面積は確保しやすい一方で、計画次第では、ホールから所要室までの動線が長くなりやすい傾向にあります。
一般的には、単純で明快な動線計画(廊下)とすれば問題はないと思われますが、複雑すぎる動線になってしまうと、避難距離(重複距離)がクリアできない事態に陥る可能性があるため、注意が必要です。
最後に
今回は4つのパターンに分けてご紹介してきましたが、実際にパターンを整理する場合には、短辺入りは長辺入りを90°回転するような考え方でいれば問題ありません。
また、今回は、説明の都合でコアや管理動線などは割愛しましたが、利用者動線と並行して検討しなければいけません。
これらは、別記事でお伝えしていますので、興味がある方は参考にしてみてください。