《一級建築士製図試験》『短辺3スパン』の計画はなぜ難しいのか?

一級建築士 製図試験

Ohashi / 建築技術研究所 です。

今回は、このブログで少しずつお伝えしている、エスキスの考え方についてなのですが、タイトルの通り、短辺3スパンの計画についての考え方についてご紹介します。

結論から言えば、「短辺3スパン」の計画が難しいのは、この計画の特徴によるものです。

この記事では、短辺3スパンの「計画の特徴」「使えるパターン」についてお伝えできればと思います。

  • 室の構成、動線性格が難しくなる
  • 平面構成のパターンを決めておくことをオススメ
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計画の特徴

短辺3スパンの計画には、以下の特徴があります。

計画の特徴
  1. 柱スパンに合わせた室の計画パターンが少なくなる
  2. 短辺2スパンを使った室(大空間)の計画をすると、1スパンしか残らなくなるため、動線計画が難しくなる

1.について

どんな計画にも言えることなのですが、スパン数が少ないということは、当然、柱の本数が少なくなるため、柱スパンに合わせた計画パターンは少なくなり、要求室の面積に合わせて適切にスパン割りを計画できていないと、室の中に柱が独立して出てきてしまう等、計画上、不都合が生じやすくなります。(図書室等、用途上、問題ない室もあります。)

2.について

短辺3スパンの計画では、短辺2スパンを使った室の計画をすることにより、下図のように各階ホールから残りの1スパンに計画した室への動線が長くなる場合があります。
そのため、適切に計画でないと、無駄に長い廊下ができて、空間構成を壊す要因になります。

大空間となる要求室Aが管理ゾーンに隣接する場合は、以下のようになります。

短辺3スパンが使えるパターン

ここまでお伝えした通り、短辺3スパンでは計画上の不都合が出やすいこともあり、使いやすい室の平面構成のパターンを決めておくことをオススメします。

ここからは、そのパターンを3つご紹介します。

最大の室が短辺1スパンで納まる時

例えば、計画可能範囲が長辺36m、短辺24mの敷地があったとします。

この時、計画可能範囲だけを考慮すれば、短辺のスパン割りの第1候補は”6m×4スパン(=24m)”です。

しかし、要求室の要求面積が概ね50㎡形だった場合、長辺スパンの第1候補”6m×6スパン(=36m)”とすると、1コマの面積は36㎡となり、50㎡形の室を計画するにはスパンから外した計画としなければならず、適切なスパン割りとは言えません。

そんな時”8m×3スパン(=24m)”が使えます。

短辺を8mとすることで、1コマの面積は48㎡となり、50㎡形の室を計画することができます。

  • 6×8=48㎡
  • 6×(8×2)=96㎡
  • 6×(8×3)=144㎡

このパターンにおいて、気を付けるべき点は、室の辺長比です。

辺長比は、1:2.5が限界で、それよりも細長くなってしまう計画は、不適合になります。
(個人的には、1:2程度が理想なため、約100㎡くらいの時には使える可能性を考えます。)

前項「2.について」の別パターン

前項「2.について」でご紹介したパターンで、要求室A,Bが入替わることができれば、短辺3スパンの計画が使えます。

このパターンでの気を付けるべき点は、歩行距離(重複距離)です。

2階以上で要求室Aを計画すると、ホールから最も離れた場所からの歩行距離(重複距離)は、必然的に長くなるため注意が必要です。

結果として、短辺2スパンの室があるパターンでは、要求室A,Bを入替えられたとしても、動線計画の難しさは変わらないということになります。

短辺3スパンをすべて使うパターン

短辺3スパンをすべて使う時には、前項「2.について」のような廊下を計画することはないため、計画しやすくなります。

しかしながら、前パターンと同様に2階以上に大きな室を計画するときは、歩行距離(重複距離)が長くなりやすい点に注意が必要です。

まとめ

  • 室の構成、動線性格が難しくなる
  • 平面構成のパターンを決めておくことをオススメ

おまけ

この記事の内容は、あくまで、考え方のひとつを示したに過ぎず、全てではありません。各々が計画しやすいパターンを見つけるきっかけになればとの思いで書いています。

また、短辺3スパンの計画は、標準解答例として多く出されています。試験元は、3スパンの計画が好きなので、標準解答例を参考にしてみるといいかもしれません。

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