一級建築士製図試験では、将棋や囲碁、はたまた麻雀と同じように最善とされる決まった手の打ち方が存在し、それらを覚えることでエスキスのスピードが格段に向上します。
今回は、前回に引き続き、一級建築士の製図試験での構造的な失敗の中から、岡立ち柱についてミスが起こる背景とエスキスでの考え方についてお伝えします。
- 岡立ち柱 - 下階に柱がない部分の梁から立つ柱
- 岡立ち柱の状態では、構造的なデメリットが大きい
- 下階に大空間を設け、その直上にその他の所要室を設けた計画は、ミスが起こりやすい
- エスキスでの考え始めは、下階の大空間と近似する面積の室(施設)が無いかということ
岡立ち柱・岡持ち梁とは
本記事の本題に入る前に前提として岡立ち柱・岡持ち梁について簡単に説明します。
「岡立ち柱」とは、下階に柱がない部分の梁から立つ柱のことです。また、「岡持ち梁」とは、岡立ち柱を支える梁のことです。
なぜ岡立ち柱がダメなのか?
柱が負担する荷重は、上階から下階の柱へ伝達されることを基本としています。
しかし、下階に柱がない岡立ち柱の状態では、柱が負担する荷重は、それを支える梁(岡持ち梁)を介して、その梁が接続されている柱へと伝達されます。
このとき、梁は荷重に耐えるために梁せいを大きくしたり、配筋量が増えたりする等、構造的なデメリットが大きいとされています。
このため試験では、”原則”NGとしています。
※標準解答例で岡立ち柱がある図面が公表された年もありますが、他にミスがなければギリギリ合格できる計画であり、確実に合格したいのであれば、そのような計画をしないのが無難です。
ミスが起こる背景
結論からお伝えすれば、ミスが起こりやすい計画は、下階に大空間を設け、その直上にその他の所要室を設けた計画です。
大空間は、利用者動線の多さ(太さ)から考えれば、1階に配置すること自体は自然であるともいえますが、その直上階の構成は十分に検討する必要があります。
エスキスでの考え方
エスキスで始めに考えるのは、下階の大空間と近似する面積の室(施設)が無いかということです。
そして、次に考えるのは、建築物全体の面積調整として大空間の上階を設けない(屋根とする)ことです。
試験では、パズルゲームのように近似する面積の室(施設)を縦に積むことできれいに納まる場合が多くあります。
例えば、約200㎡の大空間と約200㎡の屋上庭園が要求されたとします。
このときの思考プロセスとしては、まず、大空間の設置階及び平面位置を決まると、屋上庭園の設置階及び平面位置が決まります。そして、屋上庭園の設置階が決まることで、屋上庭園に関連する所要室の設置階を決めることができます。(大空間に関連する室も同様です。)
※設置階が指定されている場合は、その指定に従います。
まとめ
- 岡立ち柱 - 下階に柱がない部分の梁から立つ柱
- 岡立ち柱の状態では、構造的なデメリットが大きい
- 下階に大空間を設け、その直上にその他の所要室を設けた計画は、ミスが起こりやすい
- エスキスでの考え始めは、下階の大空間と近似する面積の室(施設)が無いかということ