建築技術研究所 です。
ブログやTwitterから建築士試験についてお伝えしています。
特に、製図試験のポイントや考え方について自身の受験経験を基に記事を作成しています。
試験に向けての学習の補助として活用していただけると嬉しいです。
今回は、エスキスのテクニックの中でも重要な「室の配置順序」についてお伝えします。
ゾーニング
室の配置順序の前に大まかなゾーニングの決め方からご紹介します。
利用者ゾーンは、どのように決定するの?
この答えを端的にお伝えすれば、利用者ゾーンは、敷地の周辺条件により決定します。
利用者に適した敷地の周辺条件とは
具体的には、試験で出題される敷地の周辺条件の例を挙げて説明します。
① 公園、湖
② 道路、遊歩道
③ 商業施設、集合住宅 等
これらの条件は、次のように考えて利用者ゾーンを決定します。
① 積極的に利用者ゾーンに開放させる
② 利用者ゾーンに開放させてもよい
③ 利用者ゾーンに開放させるのは好ましくない
この中でも、エスキスで気にすべきなのは、【③利用者ゾーンに開放させるのは好ましくない】の方角を把握することです。
エスキスを進行させるプロセスとして重要なことは、『こうなったらいいな』ではなく、『こうあるべきではない』という視点をもつことです。
また、条件によっては、①ではなく②の方角に利用者ゾーンを向けることで簡単にエスキスがまとまることもあります。
利用者が優先
エスキスのゾーニングにおける優先順位は、常に「利用者」です。
管理ゾーンも「受付カウンター」があると出入口に隣接した位置となりやすいですが、利用者ゾーンの決め方次第では、そうならない時もあります。
受付カウンターが出入口に隣接させられない場合、出入口の正面という方法がありますが、利用者の動線が、所謂、逆動線になりやすく、また、管理者の室が無窓居室になりやすい点に留意が必要です。
室の配置
大まかなゾーニングが決まったら、室を配置していきます。
簡単にエスキスをまとめるには、どのように室を配置すれば良いの?
この答えは、【大きな室を建築物の隅から配置する】です。
なぜ《大きい室》からなのか
《大きい室》≒利用者が多い室であり、それらは、共用部からの動線に留意する必要があるからです。
「人の流れ」を課題文から適切に読取ることは、一級建築士試験合格の第一歩です。
なぜ《建物の角から》なのか
この理由は、【利用者動線を単純にするため】【構造的に不利にならないようにするため】の2つです。
利用者動線を単純にする
次の図を見比べてください。
少し極端な例ではありますが、どちらの図も室A,B,Cの大きさは基本的に同じですが、かなり印象が違って見えます。
大空間を建物中央に配置してしまうと、ホール(共用部)に面しない室(左の図の室B,C)の動線の取り方がきれいに納まりません。
また、エスキスでは、大空間の上階を意識しましょう。
赤く塗りつぶした部分が、上階のスペースになります。
上の図では、例として屋上庭園と組み合わせていますが、どちらが出来ているように見えますか。
不自然に飛び出した部分があると、出来ているように見えませんし、実際、動線は通常よりも長くなってしまいます。
構造的に不利にならないようにする
製図試験において、最も簡単に構造に配慮する方法は、右図のように建物を極力、整形とすることです。
ましてや、左図のように建物の一部が飛び出ている計画は、構造的に不利になるばかりではなく、前述の通り、動線が必要以上に長くなってしまいます。
製図試験において、難しい構造の知識は必要ありません。
しかしながら、このような基本的な感覚は持っているものとして、課題が与えられます。
まとめ
エスキスにおける「室の配置順序」の考え方は、
【大きな室を角から配置する】
ということが、重要になります。
また、その前提として、利用者ゾーンは、敷地の周辺条件により決定されます。
これらは、あくまで基本的な考え方であり、課題要求によっては例外も出てきますが、意識してエスキスに取り組むだけで、単純な動線となる建築物の計画が出来るようになります。
今までエスキスがまとまらないという受験者は、資格学校の初期課題などの簡単な問題で、正しい室の配置順序が出来るようになるまで繰り返すことで、合格が確実に近づきます。